スポーツ界も動きが止まり手持ち無沙汰な昨今ですが、現在J SPORTSで放送されているラグビー名勝負を主観満載でレビューしてみました。拙筆ですがご覧下さい!
黄金期を迎えていた東芝と、清宮克幸氏を監督に迎え初優勝を目指すサントリーの対戦となった06/07シーズンの決勝。
メンバーを見ると、東芝には#4大野均、#5侍バツベイ、#10広瀬俊朗、#12マクラウド、#13富岡鉄平という強力な布陣。
ちなみに2020年現在、サントリー含め多くの選手は第一線を退いている中で、大野選手はいまだに東芝で現役バリバリという…すごいの一言です。
一方のサントリーは#1長谷川慎、#9田中澄憲、#14栗原徹、#20沢木敬介という、現在大学・社会人・SRでコーチを務める人材が目白押し。
個人的にはラグビーをやるきっかけとなった早稲田と関東学院という、素晴らしいライバル関係の中で鎬を削った#8佐々木隆道と#15有賀剛が、共にルーキーで先発というのも感慨深いものがありました。
強風の秩父宮で行われた試合は、東芝のゴール前ラインアウトがほとんど決まらず、得意のモールに持ち込むことができません。
一方のサントリーはSH田中のテンポの良い球出しでアタックのリズムを作りますが、あと一歩のところで得点できず、東芝のロングキックで陣地を戻されるという展開となります。
両チームともに1トライを挙げて折り返し、後半はより一層接点でのぶつかり合いが強烈になります。
痛みに強いラガーマンたちがそこかしこでメディカルの手当てを受けている姿には、この試合の壮絶さと自分の身を厭わない勝利への気迫を感じました。
後半の半ばに差し掛かり、ハイタックルによりシンビンで一人少なくなった東芝ですが、サントリーにゴール前まで攻め込まれながらも得点を許さず。
接点でハードにチャレンジし続けた東芝の執念がラストワンプレーを呼び込みます。
13-7のサントリーリードで迎えた後半40分過ぎ、次にプレーが途切れれば終了という時間帯で、この日初めてモールを組んだ東芝がジワリジワリとゴール前に迫り、最後はバツベイが相手を吹き飛ばしてのトライ。
コンバージョンも決めて東芝が土壇場の大逆転で優勝を手にしました。
最後の最後に一番得意なモールを組み、シンビンから戻ってきた一番強い選手にボールを預けての劇的な逆転劇。
試合を通して得意の形が作れない中でも自分たちを信じて前に進み続ける姿に強豪としての矜持を感じました。
逆にサントリーにとっては悪夢のような瞬間だったでしょう。
サントリーは次の年にマイクロソフトカップ初優勝を手にしますが、あと一歩で勝利を逃したこの時の経験は、以後強豪チームになっていくことと決して無関係ではなかったと思います。
歴史に残る名勝負を演じ、勝者に限りなく近づいたサントリーの選手にも、心から深い尊敬の念を覚えます。
それから13年が経った現在、2020シーズンのトップリーグは残念ながらキャンセルとなってしまいましたが、またあの興奮と感動が戻ってくること、そしてこの試合以上の名勝負が見られることを祈って、今は過去の名勝負を見ながら静かに待ち続けたいと思います。