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できるなら、一瞬(田村)

若葉青葉の候、みなさまいかがお過ごしですか。
5月27日、西武対DeNA、ビジターヒーローインタビュー秘話でございます。

今シーズンより、ベルーナドームのライオンズホームゲームにて、ビジターチーム勝利時のヒーローインタビューを我らSports Zoneの愉快な仲間たちで担当しております。
私はこれまで2度の割り当てがあって2度ともライオンズ勝利、イコール出番なし、弁当ただ食い。
迎えた5月27日、三度目の正直なるか、二度あることは三度あるのかー

それにしても目の前の試合の勝敗如何でその日の仕事が有ったり無かったりするというのもなかなかない体験です。
こういう時、どんな心持ちで眼前の試合を見ていればいいのか。
ビジターチーム頑張れなのか、あるいはその反対なのか、弁当だけ食って帰るつもりなのか。
この場合、あらゆるアスリート、あらゆる勝負師がそうであるように、自分でコントロールできない事象に対して一喜一憂しない、ただ、流れに沿う、という結論。

この日の試合は投手戦、ライオンズ髙橋光成、ベイスターズ大貫晋一、両投手の譲らぬ投手戦となりました。
均衡破れたのは7回表、二死三塁から関根大気のタイムリーが飛び出し遂にベイスターズ先制。
ここから私の灰色の脳細胞も動き出す。
決勝タイムリーの関根、ナイスピッチングの大貫、二つのストーリーを用意しながらシミュレーション開始。
虫嫌いの大貫投手はベルーナのマウンドの印象聞いたら虫の話してくれるかな、とか、関根選手はヒーローなら前日に続いて二夜連続!
ところでタイムリー放ったあの打席、3球目のセーフティースクイズについて振り返ってみたいのですが、とか、いろんなパターンを考えながら
(余談ですが日によってライオンズの辻監督勝利インタビューを担当する時もあります。その場合はどちらが勝ってもいずれかサイドの仕事が発生、ルート分岐も更に増えるというわけです)。

8回裏終了時点でヒーロー大貫、の連絡が入り、スタンバイ開始。
ビジターでもあり時間的制約もあるなか、ピンポイントを深掘りするというより、ある程度大づかみでツボだけ外さず、あとは選手の言葉を待とう、という。文言もより簡潔に。
「今シーズン最長の7回1/3イニングを投げ99球無失点の!」みたいなことをめっちゃ早口で、というのはなし。オンエア上はともかく、反響するドームでは、ゆっくりはっきりとしゃべらないと、場内のお客さんには聞き取りづらくなってしまいます。
あとは質問の言葉尻、「どうでしたか?」×3、みたいなことになりがちですがそれもどうかと思うので微妙に違う言い回しを考える。
同じことなんだけど何通りの言い方で言えるか、国語のテスト。
選手の肉声が聞きたい皆様にとってはどうでもいいようなことで一番頭を悩ますインタビュアー。

試合終了、虎の子の1点を守りきってベイスターズ勝利。
田村、ついにベルーナドームに立つ(リモートなのでダグアウトの端あたり)。
第一声で声がひっくり返ったりする繊細な心持ちは流石に失われていた。
1万2千人もいたらもうそれは壁にしか見えない。
大貫投手は謎のインタビュアーに的確に答えてゆく、「7回関根選手のタイムリーはどのような思いで?」との定番質問に、自身が降板した8回のマウンドの話まで展開してくれるクレバーさ、大貫投手の今後のさらなる飛躍へ期待が高まる。
そして大貫投手の言葉に、声は出さねど呼応する拍手沸き立つベルーナドームの右半分。
それはもちろん壁などではなく、心熱くさせられた一人ひとりのファンの存在が確かにそこにあることを訴えかけてくる。

こうして私のベルーナドームインタビュアー、三度目にして迎えた初日は幕を閉じた。
武蔵藤沢の私、東久留米の私、保谷の私、大泉学園の私、小手指の私、みんなに今日のことを伝えたい。
やり続ければ、それなりになる。それなりには。もっと先?ならもっとやり続ければ。

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田村純アナウンサー