雪も散らつく寒空の中行われた2010-11シーズンの決勝戦は、4年連続の決勝進出ながらいまだ優勝を手にしていない三洋電機と、07年以来2度目の頂点を狙うサントリーの対戦となりました。
三洋電機は#4ダニエル・ヒーナンや#8ホラニ龍コリニアシ、#10トニー・ブラウンなどの実力者に加え、#2堀江翔太、#9田中史朗、#11山田章仁ら、のちのジャパンの主力を狙う若手も名を連ね、堅いディフェンスで勝ち上がってきました。
サントリーも#3畠山健介や#5真壁伸弥、#9日和佐篤などの日本代表常連となる若手と、#6トッド・クレバーや#10トゥシ・ピシ、#20ジョージ・グレーガンら海外代表キャップ保持者が在籍。
何より監督はエディー・ジョーンズ氏で、質の高いアタッキングラグビーを標榜しているチームです。
サントリーの攻撃対三洋電機の守備が最大の見どころとなりました。
前半はサントリーが押し気味でゲームを進めます。
ボールを左右に散らしつつフェイズを重ねて、テンポの良いアタックを見せますが、ホラニやヒーナンの強烈なタックルやブラウンのジャッカルに遭い、なかなかトライまで結び付けられません。
一方の三洋電機は、敵陣で得たペナルティはほとんど#15田邉淳のPGで得点を狙う作戦を取り、堅実な試合運びを見せます。
ノートライで前半が終わるかと思われた35分、再三にわたるアタックをし続けたサントリーが最後に数的有利を作り、#14長友泰憲が右スミにトライ。
前半を11-6で折り返します。
後半も同様の展開になるかと思われましたが、サントリーFW陣のサポートが僅かに遅れたところを三洋電機は見逃さず、次々にターンオーバーを奪います。
若き山田もこの大一番で素晴らしい輝きを放ち、試合の主導権を握った三洋電機が後半10分で2トライ。
その後も堅牢なディフェンスは揺るがず、最大17点のリードで試合を決定づけます。
サントリーはSHをグレーガンに変えて攻撃のリズムに変化を与えると、試合残り時間20分の多くを敵陣で過ごし、三洋の強力ディフェンスを押し込めます。
相手のペナルティも絡んで2トライを奪い1トライ差に迫りますが、反撃もここまで。
三洋電機ワイルドナイツが四度目の正直で悲願のトップリーグ初優勝を手にしました。
次のシーズンからはパナソニックに名称が変更となったので、三洋電機の赤いジャージはこれがラストシーズンとなりましたが、その最後に見事な勝利を挙げ、歴史に名を刻みました。
この試合からは現在の日本代表のルーツが見えたような気がします。
FWとBKが連動してどんどんボールを動かしていくサントリーのアタッキングラグビーと、鋭いタックルを次から次に浴びせ、倒れたらすぐ起き上がる三洋電機のディフェンスは、まさに昨年のワールドカップで日本代表が見せた姿です。
現在にもつながる各チームのスタイルや、ワールドカップ戦士の若かりし姿を見られるのも昔の試合を見ることで得られる楽しみですね。